一家そろって屠蘇を酌み交わし、健康と幸せを願う……日本のどこの家庭にも見られる元旦の光景です。
「おとそ気分で」などとも使われる、この屠蘇とは一体何なのでしょうか。いつからどういう意味で行われて来たのでしょうか。
屠蘇は古代中国の風習で、疫病退散の一つの方法であったわけですが、処方生薬からみると、単なるまじないや習わしだけでなく立派な薬効をもった薬酒であるといえます。
現在用いられている屠蘇散の一般的な処方は、山椒 0.5~1g 桂皮・白朮・桔梗・防風 各0.3~0.6g 丁字・小茴香 0.05~0.1g 陳皮 0.3~0.6gで、ずっと以前は、烏頭、大黄といった作用の強い薬が配合されていましたが、時を経るにしたがって強い薬は除かれてきて、今では誰が飲んでも害にならない処方になっています。
古来屠蘇について多くの記述が残されていますが、名称やそのいわれ等について、いろいろの説があります。
記録に現れたのは晋の時代の小品方が最初で、魏の名医華陀がこの処方を始めたとされています。
屠蘇の意味には、屠蘇庵という草庵の名であるという説、蘇と呼ばれる悪鬼を屠むるという意味であるとする説、この生薬の配合が流行の病を食い止め、屠むったものが蘇ったという説など諸説があります。
いずれにしても、屠蘇には、その年の健康を願う意味が込められているようです。
わが国では嵯峨天皇の弘仁二年(811年)初めて宮中に用いられたのが民間に広まったといわれます。
その用い方は、医心方によると
「屠蘇酒、悪気温疫を治する方、之を細切して緋袋に盛り、十二月晦日に井戸の中に沈め、元旦の夜明けに出し、三升(現在では三合)の温酒中に置き、屠蘇の東、戸に向かって之を飲む。各三合(現在では三勺)先ず小児より起り、一人之を飲めば一家病なく、一家之を飲めば一里疫なし……」
と絶大な効用をうたっています。
要するに、屠蘇を赤い三角の袋に入れ、予め水中に浸しておき、後にこれをとり上げて温酒に入れ、年少の者より順次年長者にまわし飲むのが正規のならわしのようです。
年少者を先にする理由については
(1)年少者は歳を得るのだから之を賀して先にし、 年長者は歳を失うのだから罰して之を後にするという説。
(2)年長者は後でゆっくり 召し上がれという、いわば優遇の意味だという説
(3)親の薬は子先ず嘗むと 云う所からきたもので、年少者は年長者の為に毒味をするのだという説。
があります。
江戸時代には屠蘇酒は庶民間に広く普及し、年の瀬にかかりつけの医者に治療代を払いにいき、その際に医者からのお歳暮として屠蘇袋を貰うのが慣わしだったようです。
一年を病気知らずで過ごすためには、正月に豪勢な効果の屠蘇をしっかり飲んでおかねばならないという事になるのでしょうか。
2005年には食育基本法が公布、2006年には食育推進基本計画(内閣府食育推進会議)が策定され、毎年6月を「食育月間」毎月19日を「食育の日」と定め食育推進運動の展開を求めています。
教育ルネサンス・食育推進プロジェクトを展開している読売新聞には次の様に記してあります。
『子どもたちの健やかな成長のために、「知育」「徳育」「体育」とならんで正しい食の教育も必要な時代となりました』
『私たちは子どもの健やかな成長のために「正しい食の教育(食育)が重要課題である」と考えております。食生活の乱れが、心と身体を蝕み、学習意欲の低下、キレる子ども、学級崩壊など深刻な問題を引き起こしている原因であるとみられています。朝食を摂らない子、カルシウム不足、そして肥満による子どもの生活習慣病が多発し、今や社会問題になっています。』
*現代の食生活の実態(毎日新聞18年7月9日より抜粋)
まずは一緒に食べる習慣を(家庭の食卓を調査している岩村暢子さんに聞く)
一昔までは当たり前の習慣だった1日3回の食事。
だが、最近は朝食を摂らない家庭も増えているようだ。
面接で聞き出した本音からは「自分の気持」を優先する親の姿が見えてくる。
思い当たることはないだろうか?
親自身にきちんと朝食を食べる習慣がない。
子どもしか食べない朝食なら、出すだけの菓子パンやヨーグルト、野菜ジュースなどは便利なんですね。
子どもは家族で毎朝食べて育って、「朝食を食べる」習慣を身につけます。物心ついたときから親がきちんと食べていないのに、1人だけ食べろと言われても無理です。
それなのに、「うちの子は食が細い」とか「食べたがらない」と言う。
「食事は自己申告制」という家族もあります。
大人同士ならありうるけど、「食べたいと言われなければ時間になっても子どもに夕食を用意しない親もいます。
「食べたいとも言わないのに無理に食べさせるわけにはいかない」と言います。
一見子どもの意思を尊重しているように見えて、実は子どもの健康をないがしろにしていると思います。
「子どもと一緒に食べたくない」と言う親が増えて気になっています。
「いつも子どもと食べるのはうっとうしい」「子どもにちゃんと食べなさいというのは、私にパワーがいる」「いちいち言って食べさせるのは私が疲れる」だから、子どもに先に食事させて、自分は後でゆっくり食べたいと言うんです。
毎日、朝食を一緒に食べている親はほとんどいませんよ。
夕食も夫と交代制で子どもと食べるという人さえいます。
親たちは「孤食」という言葉が使われ出した81年ごろに小、中学生だった世代です。当時の子ども達は、塾などの理由で仕方なく「孤食」でしたが、その弧食育ちの子どもたちがいま親となって「一人でゆっくり食べたい」と言うようになっている。
岩村暢子氏の調査では、昭和36年生れを境にしてして食に対する姿勢が変わるという結果が出ているそうです。
食育(正しい食の教育)に関心を!(2)
『学校給食の改善だけで非行をゼロにした小中学校 教育長が実践した“食育”とは』
櫻井よしこ氏のブログ 2006年1月7日 より
師走も押し詰まってから、よい話を聞いた。
長野県小県(ちいさがた)郡真田(さなだ)町を訪ねたときのことだ。
真田町には、歴史が色濃く息づいている。
新幹線の上田駅から町に向かうあいだにも、武田信玄が村上義清を相手に戦い、1ヵ月間も陣を構えてなお落とせなかった、砥石という山がある。
信玄が苦労したその山と義清を、真田幸村のおじいさんに当たる真田幸隆がわずか一日で攻め落としたそうだ。
かと思えば、佐久間象山が学んだ龍洞院への通い路が、今も山裾を這うように続いている。
日本の歴史が庶民の語り継ぎのなかに生きているこの町は、1,100人あまりの小中学校の児童生徒に地道な、しかし刮目すべき指導を行ない、大成功を収めてきた。
第一が、食事に関することだ。
町の教育長の大塚貢氏が語った。
氏は、教育長就任前は校長を務めていた。
「私が行った学校は、世間でいう荒れる学校が多かったのです。朝礼で子どもがバタバタと倒れる。調べてみると貧血です。授業に集中できずに騒ぎ出す。調べてみると、
空腹なんです」
こんな体験を重ねた大塚氏は、意を決して早朝からコンビニエンスストアの前に立った。
自宅で手づくりの朝食を食べさせる代わりに、コンビニのおにぎりや弁当を子どもに与える家庭を割り出したのだ。
氏は笑って言う。
「探し出してどうしようとか、況(いわ)んや公表するつもりはまったくありません。ただ、子どもたちが荒れるのも非行に走るのも、その背後に、おなかが満たされない、したがって、文字どおり健康な子どもになり得ない実態があると感じましたので、そのことを確かめたかったのです」
直感は当たっていた。コンビニ弁当を多食していた子どもたちと、校内で問題を起こしていた子どもたちがほぼ一致したのだ。
そこで、大塚氏は猛然と取り組んだ。
学校給食の改善である。
基本としてパン食を発芽玄米混じりの米食に切り替えた。
育ち盛りの子どもたちのためにボリュームをいっぱいにし、栄養のバランスを考え、そしてなによりも、おいしくした。
「地元の産物を活用したんです。コメも地元、野菜も卵も果物も地元の穫れたて。子どもたちの評判はよかったですねえ」と大塚氏は笑う。
それでも現場では抵抗があった。
米食よりもパン食のほうが扱いが簡単だ。
生徒の母親たちのなかにも、米食ベースの給食に反対の声があった。
そこで、大塚氏らは親たちにも給食を開放した。
親たちは昔ながらの家庭の味の給食に納得し、徐々に反対論はなくなった。
荒れていた学校が健全な学びの場になった。
教育長に就任すると、大塚氏は町の学校全体で同様の取り組みを始めた。
給食は、五食とも米食。モリモリと食べさせ、学校の花壇には皆で花を植えた。
土づくりから始まる本格的な取り組みによって、子どもたちは体を動かし植物を育てる、つまり、
命を育むことを知った。
「この3年間、真田町では子どもの
非行がゼロです。外の人たちはなかなか信じてくれませんが、本当にゼロなんです。しかも、都会の子どもなどにも負けない学力があります。体力も、思いやりや優しさもあります」
全国規模の学力テストでは、真田町の子どもたちの
平均学力は抜群に高いという。学校単位でなく、小学4校、中学3校の町の学校全体の平均で、ズバ抜けている。
大塚氏の表情は明るい。学校とともに、さぞかし各家庭も努力を重ねたに違いない。そう言うと、意外な答えが戻ってきた。
「お母さんがたのなかには、朝も学校で食べさせてほしいという人もいる」そうだ。
おとなを再教育することがいかに難しいか。
それでも、学校給食だけでも子どもはこんなに変わってくれる。
希望を持ち続けたいものだ。
(家庭でも心がけたら更に効果が上がるはず。郷土料理の再評価を示唆していますね。正木)
食育(正しい食の教育)に関心を!(3)
現代人の食生活に警告! コンビニ食で豚が死産!?
月刊「サイゾー」‐2005年11月号
02年、福岡県内のある養豚場で、妊娠した25頭の母豚に異変が起きた。
「出産した子豚の大半が死産。無事生まれたかと思うと、奇形であったり……。
通常、白透明の羊水は、チョコレート色に濁っていました。
このようなことは、養豚業を35年間続けてきて初めてのこと」(養豚場主)
第一報は西日本新聞「食くらし」取材班により報じられた。記事によると、養豚場主は豚のエサ代を浮かせるため、回収業者から賞味期限の切れたコンビニの弁当やおにぎりを調達。
それを毎日3キロ約100日間、妊娠中の母豚に与え続けた結果、日増しに太り始めたという。
そこで、農場主はすぐに量を減らしたが、結局、約250頭の子豚に不幸が襲った。
同紙では、こうした“食”に関するニュースをシリーズ連載。
読者からの反響も多く、連載記事をまとめたブックレット『食卓の向こう側』は、これまでに5冊刊行されている。
「現代の“食”が、私たち社会の何を映し、何を問いかけているのか。その背後にあるものを見つめることが、テーマのひとつです」(同取材班)
この豚を襲った惨事だが、いまだ、原因は判明しない。
しかし、コンビニ弁当を食べ続けた母豚の身に起こった事件であることは、紛れもない事実である(コンビニ名は不明)。
『脱コンビニ食!』(平凡社新書)などを著書に持つ食生態学者の山田博士氏は、今回の事件について次のような見解を示す。
「人間と比べて、一生のサイクルが短い豚に、早くから顕著な影響が出たと考えることが出来ます。これは、決して豚に限ったことではありません」
厚生労働省の発表によると、04年の死産件数は3万4000件にも上る。医療技術の飛躍的な進歩にもかかわらず、過去10年の新生児の死亡率は、ほぼ横ばいのまま。
「流産については、統計資料はありませんが、推計年間30~40万人ほど。未熟児や先天性異常の赤ん坊も増えています。また、最も健康であるはずの若者にも異変が起こっています。青年海外協力隊に入隊を希望する若者の実に“4割”近くが、健康診断で失格となっているのをご存じでしょうか? この原因として考えられるのが、現代の食生活なのです」(山田氏)
忙しい現代人は、コンビニの弁当やおにぎり、デパ地下の総菜といった、調理済み・加工食品-コンビニ食品-に頼りがちである。
しかし、山田氏は前記した食品に含まれている可能性が高い5つの成分の危険性を説く。
その5つとは、①合成着色料(タール色素)、②安息香酸、③亜硝酸塩、④BHA(酸化防止物質)、⑤MSG(化学調味料)である。
「①で特に気をつけたいのが『黄色4号』と呼ばれる色素。これは、お菓子や飴、漬物などに使用され、ぜんそくや目鼻のアレルギーを引き起こす場合があります。②は、毒性の高い保存物質であり、加工食品や清涼飲料水、ドリンク剤に使われ、突然変異を起こす変異原性が指摘されています。ハムやソーセージの発色に使われる③は、アレルギーの原因であり、タンパク質の成分であるアミン類と一緒になると強い発がん性を誘発。コンビニ食の調理用油に広く使われるパーム油の酸化防止のために添加される④は、発がん性を懸念した厚生省(当時)が、80年代に全面禁止を検討したもの。コンビニ食の味付けにかかせない⑤は核酸性の場合、痛風になる可能性を高め、成長ホルモンや生殖機能への影響も疑われています」(山田氏)
一方、最近の大手コンビニでは、食品添加物、原材料、包材において独自の品質管理基準を設け、安全性を宣言しているところも多い。
コンビニ、食品メーカー各社は、食の安全性に向けて品質管理を積極的に進めているのもまた事実である。
「最近、若者の間で潰瘍性大腸炎やクローン病などが多くみられるようになりましたが、それは食生活の欧米化やコンビニ中心の偏った食生活が原因ではないかといわれています。ですが、コンビニ食だけが危ないと言い切ってしまうこともできません。死産や奇形について言うなら、サプリメント(ビタミンA)の過剰摂取を危険視する声もあります。養豚でも育成を早めるために、ビタミン剤やアミノ酸を与えることがあるそうです」と山口大学医学部付属病院・管理栄養士の田坂克子氏は指摘する。
そこで、前出のビタミン使用の有無を確かめたが、「通常は使用するが、妊娠期間中は、コンビニ弁当しか与えていない」とのこと。
「コンビニ弁当を与えれば1カ月20万円ほどのエサ代が浮き、その分は自分の酒代に……なんて考えていたら、結局は総額300万円ほどの被害を被ることに。変な欲は出したらいかんということですね」(畜場主)
本来のエサに戻した現在、畜場では月に200頭もの元気な子豚がうまれているという。豚児では済まされない豚を襲った災難であった。(大崎量平)
平均的日本人は1日80種類、11g(100gとの報告もある)の食品添加物を摂っていると云われます。個々の安全性(毒性)もまだ問題点がある上に、多くの種類を何十年も合せて摂り続けた場合の弊害についての検証も課題です。現状では添加物の摂取をゼロにすることは不可能です。そこで、有害・不要な物質を素早く体外へ排除する(デトックス)作用の強い、漢方薬・クマザサ・クロレラなどの活用が健康を守る対策のポイントになってくると思います。(正木)
食育(正しい食の教育)に関心を!(4)
ベルツ医師 (明治初年の東京医学校教授) の実験で判っていた!
日本食こそ日本人に合った食事!
「食とからだのエコロジー(島田彰夫)」より
日光まで鉄道のなかった当時、ベルツ医師は一度目は馬で、二度目は人力車で日光に行った。東京から110数キロの道を、一度目は馬を6回取り替えて14時間かかったが、二度目のときは人力車夫が一人で14時間半で走ってしまったのである。100キロを超える道である。もちろん途中に休みもしたろうが、その回復力の強さは素晴らしいものである。
驚いたベルツは二人の人力車夫を雇って、体重80キロの人を乗せて、毎日40キロの道を走らせた。体重は減らないどころか、一人は僅かではあるが増加したという。食事を調べても「粗食」そのものだった。
そこで当時の栄養学の権威であるフォイトの考え方にしたがって、肉などを食べさせたが、すぐに疲労感が増して走れなくなり、もとの食事に戻したところ、再び走れるようになったというものである。
ベルツは粗食と評価される日本食がもつ意外な一面を発見し、その後も、日本人にとって日本食が非常によく合っているのではないかと論文を書いている。
当時の日本人はエネルギーのおよそ80%を炭水化物から得ていた。現在は50%台まで低下し、なかでも穀類からのエネルギー摂取は45%を切っている。当時のエネルギー摂取の中心はもちろん穀類などの澱粉である。そのような食事をしながら、現在とは違って、人力だけが頼りの肉体労働をしていたのである。
澱粉を中心とするエネルギー摂取は、唾液にもアミラーゼを分泌するという、ヒトの特性から考えても理に叶ったことである。ヨーロッパ人のように、肉や牛乳を食の中心に据えなければならなかった地域と違い、五穀を始めとする豊かな実りに恵まれた日本の自然環境に感謝しなければならない。
このように日本人の食事が、日本人にとって良いものであるという評価は、ほとんどの「和魂洋才」の日本人指導者によって無視され続け、欧米が優れていて、日本が劣っているという意識だけが頑固に残された。それが第二次世界大戦の敗戦によって増幅されたといってもよいだろう。「欧米並み」であることを目指す「栄養改善」の背景であるといえよう。
日本人の食生活の体系は「栄養改善」によって破壊されたといっても過言ではない。日本人ばかりでなく、あらゆる民族の食生活の体系は、歴史的な人体実験の成果として築き上げられたといってもよいだろう。少なくともある地域の自然環境を背景として、もっとも健康に暮らせるような食品の組合せ、調理の仕方、食事の仕方などを総合したのが食生活の体系、あるいは地域の食文化といわれるものである。食生活の破壊は、健康の破壊でもあった。
安易な食生活改善としたのは、戦後の栄養「改善」といわれたものが、日本の食文化の否定の上に立った、しかも欧米の食文化、欧米の食生活の体系から切り離された、食生活の「部分」のつまみ食いによる日本人の食生活の欧米化であったからである。
もう一つの背景には、欠乏症の研究に始まる栄養学における「不足」に対する恐怖感がなかったとはいえない。しかし寒冷なヨーロッパと比べて、はるか南に位置する日本人の生活環境では、摂取エネルギーひとつをとっても、ヨーロッパ人より少なくて済むはずである。
日本と日本人について、十分な配慮がなされなかった栄養改善がもたらした代償は、あまりにも大きかったことを痛感せざるを得ない。悪性新生物や心疾患は、食生活の体系を欠いた状態を続けた本人に現れた問題であり、近年になって急激な増加を見せている食物アレルギーなどは、母体を通じて、また出生後に与えられた食物によって次の世代に現れた健康問題であると捉えることができよう。
身土不二。住む土地の気候風土・環境の下で最も健康的に暮らせるように民族固有の食習慣が生まれているのですね。伝統を尊重せねば。(正木)
食育(正しい食の教育)に関心を!(5)
日本人に合った正しい食養生 ①
五 味 調 和(ごみちょうわ)
五味調和の図はこちら
http://www.hougi.org/hougi04.nsf/
古来、中国では「薬食同源」と云い、体を治す為に薬と同様に食を重視しました。五味とは酸・苦・甘・辛・鹹(さん・く・かん・しん・かん)の五味が、どの臓腑器官にどう作用するのか、五性とは寒・熱・温・涼・平の五つに効能を分けて、温めて機能を亢進させるもの、冷やして炎症を静めるものなど、あらゆる薬材、食材の効能を五味五性で規定し、「五味調和の原則」に基づいて、健康を回復する食事も、病気を治す薬も調理調剤されました。
冷え性のものには暖まる食品を与え、熱症状の体質には冷やす食品を調理するのが寒温の調和です。また、肝と腎の両方が弱っていれば、酸鹹二味の食材料を寒温整えて調理します。.体に本当に良いものは舌が美味しいと感じます.中国料理が世界一美味しい秘密はここにあり、治療食・健康食として「薬膳」が注目されているのは当然と言えます。
*酸味(さんみ)は、収斂作用があり、肝・胆・目に良い。りんご・梅・ゆず等
血液の流れをサラサラにし動脈硬化や梗塞を防ぎます
*苦味(にがみ)は、消炎と固める作用があり、心臓によい。よもぎ・うど・お茶等
充血炎症や心臓のオーバーヒートを和らげます。
*甘味(あまみ)は、緩める作用と滋養強壮作用があり脾胃によい。うどん・米・砂糖等
いわゆる旨味の中心で体の栄養になります。甘味を体に合わせて上手に摂取する為には調和が必要
です。
*辛味(からみ)は、発散作用と体を温める作用があり肺・大腸によい。生姜・ねぎ等
香りのものスパイスやハーブでくしゃみ、鼻水、鼻づまり、皮膚病、腹が冷える方や、便秘しやすい方
はタップリお摂り下さい。
*鹹味(しおからみ)は、軟らげる作用があり、腎・膀胱・耳・骨によい。めざし・わかめ・食塩等
小便を出すためには塩が必要です。多からず少なからずです。
五味の関係を知って、食べる時は単味ではなく最低二味を組み合わせます。
例えば辛味の代表お酒を呑む時は、その害を防ぐ呑み方は、肴に相剋の酸味のものをとって肝を守り、更に辛から見て子の位置の腎膀胱に害が及ぶのを防ぐために鹹味のものを食すことです。
現に日本酒好きの人は、酢のものや塩辛を好みます。
またメキシコの強い酒テキーラは、レモンに塩をつけて齧りながら呑むのが常道です。これらは正に三味配合の実行そのものと云えます。
食育(正しい食の教育)に関心を!(6)
日本人に合った正しい食養生 ②
飲み物・果物・生野菜の類はできるだけへらすこと
(野菜は熱をかけ、水分を除いた形で食べること)
漢方では病気の原因を気(精神神経)、血(血液・血流・炎症)、水(水分代謝障害・水毒)に分析し、それらに対応するくすりを施薬することを基本にしています。今回のテーマは、この内の水毒(水滞症)を防ぐ養生についてです。
水分の過剰摂取、排泄不足の状況があると、消化管、気管、皮下、四肢等に水の停滞が起こり、腹中雷鳴、胃下垂、下痢、せき、喘息、肺炎、発熱、むくみ・神経痛、リウマチ、多汗症・皮膚病、排尿異常など様々な症状が現れてきます。
西洋医学発祥のヨ-ロッパは大陸で、その乾燥した気候風土では、体表からの水の発散が無理なくスム-スにおこなわれ、水滞という症状は起り難い環境にあります。また、食事からの水分摂取の少なさもあって、西洋医学では、溢水に対する対応はあまり考える必要がなく、脱水に対する注意の方が重要視されています。中国も大陸なので同様です。私は5月の北京で、小便の出が極端に少なくなって驚いた経験があります。尿で水を排泄しなくても、皮膚からどんどん出て行くからです。こういう土地ではこまめに水分補給を心がける必要があります。
一方日本は湿気の多い島国で、もともと非常に水滞が起こり易い気候風土です。食事は水分の多い米、野菜が中心の上、最近は欧米志向の清涼飲料水、果物、生野菜の摂取が過剰なので、水滞を抱える人がとても多くなっています。
現代医学で「腎性高血圧」「降圧利尿薬」という語があるように、泌尿器と血圧は密接な関係があります。血圧が気になる人は過剰の水分摂取を制限して泌尿器の負担を軽くすることが漢方では養生の基本です。
風邪も漢方的にみれば水毒症で、すべて水が溢れた症状を伴うといえます。体内にたまった水を無理に体表から出そうとすれば発熱することになります。水が上からあふれ出て鼻水・痰・せき・涙目になり、耳にまで分泌が起こると中耳炎にまで進みます。吐き下しの風邪は消化管にたまった水を上下両方から排出しているのですし、筋肉、関節やリンパ管に滞ってくると節々が痛み、扁桃腺がはれて痛むことになります。そのため、風邪を治す漢方処方は水分代謝を改善するくすりの組み合わせが中心になっています。
水滞の排除を担当するのは、腎・肺・大腸と皮膚の四つの器官です。この四つを正常に機能させるためには、前回の「五味調和」に基づいた食生活を心がけることが必要です。適量の鹹味・酸味・辛味・苦味の食物が必要です。何故なら、腎を補うのは鹹味、助けるのは酸味と辛味、益するのは苦味だからです。日本人は腎の負担を軽くする塩と香辛料の使用が肉食民族より少ないです。梅干・味噌・漬物・佃煮などの保存食は減塩していないものにし、ニガリ成分の入った「海の精」などの天然塩の使用が必要です。
体を温め血行をよくするものを口にすることが予防であり、水物を控えめにすることが養生です。
食育(正しい食の教育)に関心を!(7)
日本人に合った正しい食養生 ③
正しい塩の摂り方をすること (専売塩と天然塩は異なる)
塩は水滞防止に重要です。諸病の根源のように云われ、悪者扱いされている塩をここで弁護したいと思います。
前に記したように、五味の内の鹹味(かんみ=しおからい味)の代表が塩です。鹹味は腎の働きを助けます。人の正常な働きに適量の塩は不可欠です。尿は真水ではなく塩分を含み、塩分なしでは尿は出ません。
漢方で云う塩は、伝統的に昔から使われてきた天然塩で、市販されている化学薬品的な塩(塩化ナトリウム)とは異なり、多種類の無機質(ミネラル)を含んでいます。ミネラルは微量でも人体の生理現象に深く関与しており、そのバランスは健康の維持にとても大切です。例えば、苦汁(ニガリ)の主体は硫酸マグネシウムで血圧や循環器のオーバーワークを抑制し、下痢という生理現象で水分を排泄するので泌尿器の負担を軽くし、塩化ナトリウムの欠点を補います。
天然塩は海水中のミネラル(50種以上)がそのまま含まれています。因みに、海水のミネラルバランスは母体の羊水や血液のそれとそっくりです。昔から塩がこの大切なミネラルの補給源だったのです。ここ数十年、日本人は専売制度の下で、公社の省力化と管理しやすさのために、精製された欠陥食品の化学塩を食べさせられてきました。これを天然塩にかえて毎日の食生活にとり入れることが健康の保持の上で大切なことです。
漢方では、腎は先天の元気の宿る所であり、現代医学的な腎臓機能の他に、副腎機能、生殖や免疫機能をも含めた機能を有し、生命の根源にかかわると考えています。塩はこれらの機能の全てにかかわってくるのですから、いかに大切かがおわかり願えるでしょう。
欧米式の減塩をそのまま日本人に当てはめると、水滞という悪影響が出ることが懸念されます。日本人の一日平均食塩摂取量は13~15gと云われます。塩の適量を一概に決めることは問題がありますが、天然塩を使い、正しい食養生がなされているのなら、今の数字は妥当なものです。最近は西洋医学者や栄養学者の中にも減塩の意味のなさを説く人が現れてきています。誤った食塩恐怖症を正し、本来の天然塩の摂取を心がけましょう。
欧米食と日本食の相違点
日本食 | 米(粒食) 菜食 味噌汁 砂糖 植物油 香辛料少 カリ分多 | | | |
水分過多 塩分不足 塩分補給 脱ビタミン・カルシウム |
欧米食 | 小麦(粉食) 肉食 牛乳 蜂蜜 動物脂肪 香辛料多 ナトリウム多
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水分少 塩分補給 塩分不足 カルシウム・ビタミン補給
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食育(正しい食の教育)に関心を!(8)
日本人に合った正しい食養生 ④
天然の酸味、玄米酢や梅干の補給につとめること
塩梅(あんばい)という言葉は、調味に使う塩と梅酢の程合いを意味し、味加減や調味のことを表現するのですが、「あんばいが悪い」という様に健康度を示す言葉にもなっています。この由来は、五味の調和の上でも健康保持の為には、塩加減と(梅の)酸味との調和が大事なことにあります。酸味の薬の基本薬能は「肝ヲ補イ、腎ヲ助ケ、肺ヲ益シ、心ヲ収メル」ですが、漢方薬には酸味の薬の使用頻度は非常に少なく、酸味は食物からとることが前提になっているというのが重要な漢方の基本原則なのです。
酸味は肝・筋肉・目を補います。肝機能に異常を指摘された人にとって、天然の酸味の補給は治療効果をあげる為に重要な食養生です。玄米酢や蜂蜜黒酢を飲むことで肝機能障害から回復したり、糖尿病・肥満・高血圧・高脂血症やメタボリックシンドロームが改善した人の例は少なくありません。肝臓に負担をかける酒を飲む時は酢の物を肴に加えると肝臓を守り、悪酔いを防ぎます。スポーツで筋肉が疲労したときに選手がレモンをかじりますが、これは酸味の働きから言って理にかなっています。また眼病の人も天然の酸味の補給に心がけることが治りを早めるポイントです。
昔は酸っぱかった果物、リンゴ・ミカン等が最近は品種改良(食養上の観点からは改悪)されてみんな甘くなっています。今はもう果物から酸味を補給する事はしにくくなってきています。しかしレモンは大量に輸入されていますし、スダチ・カボス等、昔は産地でしか手に入らなかったものが最近はその季節には店頭に並びますから鍋物・焼き魚・フライ等の料理には必ず添えたいものです。
酸味の代表として重要なものに梅があります。梅の実の酸味はクエン酸・リンゴ酸・コハク酸・酒石酸などです。グラム陽性・陰性腸内細菌に対し抑制作用があり、各種真菌に対して抗菌作用があるので、下痢や食中毒に応用されます。梅の酸味は食品に鮮度を保ち、腐敗を防ぎ、脂肪を中和し、口中をさわやかにして食味を進めます。また、疲労や夏負けの原因となる血液の酸性化を防ぐ、アルカリ食品の雄でもあります。昔と比べると最近は梅干を食べる事も減ってきているようです。食卓に常備して1,2個は毎日食べるようにしたいものです。
次に日本人にとって最適の酸味補給源といえば、酢、それも半年以上も醸造つぼの中で寝かせて熟成した昔ながらの玄米酢です。この玄米酢のよさの秘密は熟成によって生まれる多種の有機酸とアミノ酸が含まれていることにあります。これが肝臓の栄養になって肝機能を改善し、代謝を良くし、様々な病邪を排除する効果につながっています。
最近は、表面的な味覚だけの合成酢や酢酸酢が横行していますから、美味な正しい自然酢や熟成した玄米酢(市場で安売りされている速成の玄米酢では効果が劣る)を常用することが肝要です。
食育(正しい食の教育)に関心を!(9)
日本人に合った正しい食養生 ⑤
美食のときは、辛温剤の香辛料の使用を忘れないこと。
近代薬学では、桂皮、茴香、月桂葉、紫蘇葉、などを芳香性健胃整腸剤と呼び、芥子、胡椒、山椒、蕃椒、生姜などは、辛味性健胃整腸剤と呼んでいます。日本では、これらを薬味とよんで常用してきました。
香辛料は、蛋白質の消化吸収に不可欠の食品で洋の東西を問わず調理に欠かせない食品です。ことに肉食には必須の調味料で、欧米では一般家庭で40~50種のスパイスを常備しています。
一方日本の家庭にはせいぜい4~5種の薬味しか常備していないのが実情で、肉を食べなかった江戸時代以前の食習慣のままです。
香辛料を単なる嗜好品と考えるのは誤りです。これは、肉の臭味を消し、腐敗を防ぎ、消化を助け、所謂肉食の害を消すために使われるものなのです。
高脂血症で高血圧の人は美食家に多いのですから、香辛料は刺激物だとして避けることは間違っているのです。肉に胡椒、刺身にワサビ、うどんに薬味といった正しい使い方が大切です。
しかし、大量に使えば刺激物の害はまぬかれませんので酢やハチミツ、絹こしゴマ等と合わせ使うことでマイルドにして活用すると良いのです。塩梅よく調和した食べ方が食養の本道です。
香辛料(日本名は薬味)の役割
役割(薬効) | 実例 |
消化を助け胃腸の機能の負担を軽くする | 消化に時間のかかる食品に用いる : 天ぷら(大根おろし・根しょうが)。さんま
(大根おろし)。かばやき(粉さんしょう)。トンカツ(ねり辛子)。ホルモン焼(と
がらし・にんにく)。焼き鳥(七味・さんしょう)。
水っぽいもの、噛まずに食べるものに用いる : うどん(七味・ネギ)。そば(ワサ
ビ・ネギ)。冷奴(ショウガ・ネギ)。お茶漬(ワサビ・ミツバ)。ラーメン(コショウ・
ニンニク)。鍋物(ポン酢・粉サンショウ・もみじおろし・ワケギ・春菊)
|
体内の血流を促進して冷えを除く | 酒(飲んべえを辛党と言い、薬味の王者とする)。トウガラシ(凍傷に用い、白菜漬物、茄子漬けに用いる)。冬の鍋物。寒い日のウドン。おでんのとき辛子。冷える茄子のシギ焼(根ショウガ) |
皮膚からの発刊発散を活発にする | 風邪の初期に汗をとる 卵酒(酒と根ショウガと卵)。ネギ湯(白ネギと根ショウガとみそ)。インドやタイ国のお国料理(発汗を良くする事により暑さに耐える)。うどん、ラーメンは薬味が加わる故に汗が出る |
腐敗を防ぎかつ殺菌効果を有す | 刺し身を千本大根にのせ、シソの葉にのせる日本人の知恵。昔からワサビは蕁麻疹の薬であった。魚を松葉やしょうがの葉にのせたり包んだりしてきた。明太子は冷蔵不要。肉類の保存にコショウをふりかけると日保ちがよい。 |
便通を正常化する | かって日本人は漬物に多くのトウガラシやカラシを加えて漬け込み、さらに七味などを加えて食べていた時代には老人性便秘や弛緩性便秘はみられなかった。朝鮮の人達はいう「日本の医者はウソつきだ。痔になっら辛いものを止めよと云うからだ。わが国ではキムチを毎日ドンブリ一杯食べよと云う。3日で治るものだから」と。辛党(酒飲み)には便秘はいない。 |
心を安らげストレスを解消する | 全身の血行をよくする故に頭に血がのぼるのを解消する。酒は心をリラックスさせ、ミョウガに至っては食べ過ぎれば物忘れしやすいので別名バカとも呼ぶ。中国人やインド人の穏健な性格も香辛料の常用による。ハッカやシソはストレス性頭痛によく効くという民間療法は体験に基づくもの。 |
食育(正しい食の教育)に関心を!(10)
日本人に合った正しい食養生⑥
甘味は砂糖を減量し蜂蜜や麦芽糖にかえること
砂糖は脱カルシウム、脱ビタミンの元凶であるばかりでなく、排尿を抑制し、泌尿器にもろに食害を加えて二次的に循環器系に負担をかけます。
ハチミツは蜜蜂が砂糖を分解してくれており、本当の麦芽糖は麦芽で米を糖化した、いわゆる水飴なので砂糖のような害がありません。 ハチミツに含まれるミネラルとリンゴ酸などの有機酸は、病気に対する抵抗力が弱く生活習慣病にもなりやすい酸性体質を弱アルカリ体質に変えることができるというすぐれた効用を持っています。
ハチミツの効用としては、造血作用、虫歯の予防、高血圧、便秘、下痢、整腸作用、駆虫、不眠症、やけどの皮膚炎回復、胃潰瘍等たくさん発見されています。虫歯を防ぐのは、砂糖を食べると食べたカルシウムの80%が流出しますが、ハチミツを食べるとカルシウムを補給するばかりでなく、他の食物からとったカルシウムの80%が体内に残るからです。皮膚炎、胃潰瘍が早く治るのも、それだけ多くの栄養を持っている事実に拠るものです。
戦後日本のハチミツ研究の第一人者渡辺武博士は、ハチミツが赤痢菌を殺すという事にまつわる面白いエピソードを書いています。
漢方の古い本に載っている、蜂蜜で腹の中の回虫が殺せたり赤痢のような下痢が治るという効能を渡部博士が書いた所、現代医薬学の学者たちから袋叩きにあいました。彼らの言い分は『回虫を入れた試験管に蜂蜜を入れたが生きているじゃないか』とか『赤痢菌に蜂蜜を入れても赤痢菌は死なないよ』とか、漢方は実証性がない、非科学的だという論でした。
丁度その頃、東大医学部小児科の詫摩教授が人工栄養児の研究に関連して、蜂蜜を入れた牛乳を赤利になった赤ん坊に飲ませた所、40時間以内に下痢が止まり、便から赤痢菌が消えたという実証の結果を得られました。試験管の中では赤痢菌に蜂蜜を入れても死なないのに、赤ん坊の体の中では蜂蜜を飲ますと効力が出てくる、これはどういうわけかということになり、渡辺博士達は蜂蜜の薬学的研究に取り組み、そのメカニズムを解明しました。
人間の腸内にはビヒダス菌という乳酸菌があって、これを蜂蜜がどんどん繁殖させます。そうなると赤痢菌は繁殖するための栄養をとられて環境が悪くなって自滅します。赤痢菌が乳酸菌に兵糧攻めにされ自縄自縛することが判りました。
漢方の蜂蜜薬効論に異論を唱えた学者たちも、その薬効が立証されるやシュンと黙ってしまい、逆にその後は蜂蜜愛用者に変わったそうです。
色々な酵素類と水溶性ビタミンやミネラルが豊富に含まれた良質のハチミツや本物の麦芽糖(デンプンを酸糖化した水飴は不可)をぜひ砂糖に代えて食卓に常備をおすすめします。
ハチミツはろ過したり脱色したりの加工品では80%以上の特殊栄養が抜けてしまいます。買う時は、見た目にはきれいでも絶対に精製という美名で改悪されていない自然のままの物で、最上、純粋なものをお選び下さい。自然なものならアカシア・レンゲ・等どれをご使用になっても結構です。
食育(正しい食の教育)に関心を!(11)
日本人に合った正しい食養生⑦
ゴマと発芽ハトムギの茶(ハト茶)を常用すること
ゴマが体によい理由
●生活習慣病の予防に
ゴマには極めて良質の植物性タンパク質と油が豊富に含有され、高カロリ-です。しかもゴマ油の半分以上はリノ-ル酸という成分で、これは動脈硬化の原因となるコレステロ-ルを溶かします。さらに、レシチンという動物性脂肪を溶かすリン脂質も多く含んでいます。動物性脂肪のとりすぎは動脈硬化の原因となり、高血圧、心臓病、腎臓病に連なります。
ゴマを常時適量食べることは、現在死亡率の上位を占める高血圧、心臓病などの生活習慣病の予防にも役立ちます。生活習慣病の予防ができれば、即長寿です。中国の古典、本草綱目に、「久シク服スレバ老イズ」とあるのは、この辺りを指したものと思われます。
●ゴマハネ-
昔中国では老化防止や、不老長寿の秘薬として「静心丸」と言うのを服用しました。百日服用すると一切の病気を除き、一年続けると、身体や顔に艶が出て若々しい肌になり、飢えをおぼえず、二年続けると白髪が黒くなり、三年続けると、新しい歯に抜け替わり、四年続けると、火や水に負けない強い体になり、五年すると馬にも負けない強い足、息切れしない強い体になると言われました。少々オ-バ-な表現ですが、この「静心丸」がゴマとハチミツをまぜて作った秘薬だったのです。
●50種に及ぶ栄養素
ハチミツとゴマ、この両食品を食べることは、50種に及ぶ栄養素を一度に食べることになり、今日市販されているいかなる栄養食品にも勝るものと言えます。
ハトムギが体によい理由
ハト茶をおすすめする理由は、皮膚粘膜のグロースファクターの補給とハトムギが持つ利尿作用による水分代謝に関わる負担の軽減です。
ハトムギは玄米にも勝る穀物で、穀物中で最も蛋白質や脂肪が多く、あらゆるビタミン・アミノ酸・ミネラルや酵素等を含んでおり、優れた栄養源であることと滋養強壮作用は高く評価されています。
ハトムギは皮膚の新陳代謝を良くする他、強い利尿作用があり、体内に滞って健康を損ねる水滞(水毒)を除いてくれる優れた効能があるので、浮腫、皮膚の荒れ、イボ、身体の疼痛等に対して漢方薬として使われます。また胃腸の働きを援け、炎症を軽度に和解するため、消炎、鎮痛、排膿の作用があります。漢方薬としては、生薬名をヨクイニンと呼びます。
ヨクイニン(ハトムギ)は、種子ですから栄養が流れ出ないように含有成分が水に溶けない構造になっています。1キログラムを煎じても取れる水製エキス成分はわずかで2g程度に過ぎません。ところが、種子を発芽状態にすると含有成分が水溶性に変化してきて、種子の時と比べると数十倍ものエキスがとれます。このことが発芽ハトムギを使ったものをおすすめする理由です。発芽ハトムギでない時は、ご飯のように丼一杯食べれば同様の効果が得られます。
五 味 調 和
東洋医学は食物療法を優先する
料理は人間の基本的な生存条件です。各民族がそれぞれに伝えてきた伝統料理は、その土地の気候風土や生活環境に順応する形で残されています。日本に伝えられる郷土料理や家庭料理もまた、日本の気候風土や生活環境と密接に関連しています。
東洋医学の原理原則は、人体を陰陽五行にみたてて、自然(宇宙)の何たるかを解明し体系化した東洋哲学の陰陽虚実の原理を、人体もまた一つの自然、小さな自然(小宇宙)であるとみたてて、これにあてはめ解明規定した自然医学の原理です。
東洋医学には食物療法、薬物療法、物理療法の三分野がありますが、漢方薬の薬物療法や鍼・灸・気功などの物理療法よりも、食養とよばれる日常の食物療法の方が優先されています。
病気になってしまってから飲む薬は、それが近代薬であれ、漢方薬であれ、これを小薬と称し、これに対して病気にかからないように心身の歪みを正常化し、健康保持と不老長寿のために毎日食べる食べ物の方を大薬といっていますが、これは食べ物が何物にも勝る薬であることを教えています。
陰陽五行と調理の原則
中国の医薬・食物・物理療法の文化は、欧米の民族が持っていない宇宙観と東洋哲学・自然医学を基礎に展開されています。
その基本原理が「陰陽虚実」と「陰陽五行論」と呼ばれる哲学で、中国医学の原典「黄帝内経素問」に説かれています。
それによると、森羅万象を陰と陽に規定しています。
陰とは寒・水・下・右・腹・地・内で、陽とは熱・火・上・左・背・天・外になります。
この原則が人間という小宇宙に適応されると、陰陽とは、病態の位置と質を示すものになります。
そして陰陽の量的表現が虚実ということです。
虚とは、陰(水滞や冷え)が多く、熱や陽(血)が少ないもの、実とは、熱や血症が多く、陰の冷えや水滞が少ないものを言います。
陰や陽という抽象的なことばの量的な偏りを示したものと言えます。
陰陽寒熱・上下・左右に歪みが生じたとき人は病気になりますが、これを是正する為に病像・病症と反対の薬性・食性のある漢方薬・食物で中和して正常化をはかるというのが漢方の基本的やり方なのです。
そのために、五行論に基づいてすべての薬物と食物について、酸・苦・甘・辛・鹹の五味と寒・熱・温・涼・平の五性が設定されています。
これは欧米では未開発の漢方独特の方法論です。
五味調和の食性表は、陰陽五行の座標の上に、日本の食材と中国料理の食材の一部を配当したものです。
これが薬剤の調剤と、食物の調理の原理の集約といえます。
何を食べるかという事と同時に、それを如何にして食するか、如何にして服むかを指示している、先人の貴重な遺産です。
食養の第一原則は、寒熱(陰陽)によって食べ方が違うことです。
陽(熱)・血症のあるとき、つまり便秘や発熱・出血・炎症のある時は、寒涼剤である苦味・酸味のものを食べねばならないし、陰(寒)つまり冷えや貧血・下痢などのときは、温剤の辛味・鹹味のものを食して冷えの原因の水滞を体外に排泄する利尿剤を服さねばならないということです。
一般論として、食性表に示すとおり、各器官が弱ったとき、それが胃であれば甘味のものを、腸や呼吸器なら辛味ものを、腎臓や膀胱には鹹味(塩からい)のものを、肝臓・胆のう・筋肉・目には酸味のものを、心臓・血脈・小腸・舌に炎症があれば苦味のものを食するのが原則です。
但しこれらの食物も、大なり小なり相剋に当たる(点線の矢印が指す)臓腑器官に、食害を与える事も知っておかねばなりません。
それはまた病気の転移の原理でもあります。それ故、甘味を食するときは、同時に塩味のものを添えて腎を補い、辛味を食するときは、肝胆を補う酸味を添え、苦味を食するときは、肺・大腸・皮毛を補う辛味を添える………という「二味配合」の原理があるのです。
これは味覚の面でも、それぞれの味が調和してマイルドになり、よりおいしく感じられます。
五味と五性の食能
(1)酸味の食べ物の食能
酸 すっぱい味で収斂作用があり、肝・胆・目によい。
┌温 梅肉・酢・リンゴ・すもも
酸┼平 梅・かりん・ヨ-グルト
└寒 ユズ・だいだい・かぼす
物事の大事なことを肝腎といい、調味の加減、味加減から健康度を表すのに、塩梅と呼んで、酸味を重視しています。
それにもかかわらず、漢方の薬物療法の分野では、酸味薬もその薬方も極めて少数です。これは、肝胆の病の療法は、直接補瀉より間接補瀉が主体であり、酸味は日常の緑野菜・果物・酢・梅干などから補給されていたことを物語っています。
今日の日本の食生活を見ると、青野菜と梅干や食酢の摂取の激減に加えて有機酸の補給源であった柑橘類やリンゴなどの果物が、酸味の少ない甘味の多い果物に変わってしまい、肝胆の備えがおろそかになった結果、肝炎、肝硬変、眼病から癌疾患までが激増しています。
五味の中でも特に酸味の摂り方の改善が大切な時であると言えます。
酢や天然の酸味はアルカリ性食品です。
食品の鮮度を保ち、腐敗を防ぎ、脂肪を中和して淡白にし、口中を爽やかにして食味をすすめ、疲労や夏負けの原因である血液の酸性化を弱めます。
筋肉疲労、肝に負担のかかる宿酔いや動脈硬化にも効果が認められています。
ただし酢を飲みすぎると胃をいため、冷し過ぎますから、二味の配合の原理にしたがって甘味を加えた二杯酢とし、さらに辛温の酒を加えた三杯酢として使用します。
漢方では肝臓の窓は目ですから、めまいや赤目・青目には酸味を、口の苦み・のどの乾きや吐き気を覚えたり、食欲不振・胸や脇の圧迫感を自覚したり、微熱のある時は、酸味と甘味・苦味の適応症と指示しています。
(2)苦味の食べ物の食能
苦 にがい味で消炎と固める作用があり、心臓によい。
┌温 よもぎ・ふき・たらの芽
苦┼平 うど・ぎんなん・春菊
└寒 お茶・ビ-ル・たけのこ
薬には苦くて飲みにくいものが多くても、古来良薬は口に苦しと言われていますが、食物では苦味のものは敬遠されます。
しかし懐石料理の名人、京都の辻嘉一翁は「甘味の料理は未熟な料理人でも調理できるが、苦味を活かした料理こそ達人の料理である」と言われました。
中国の本草学では、「苦味の食物や薬物には、強心・消炎・止血・解熱・鎮痛・利尿の諸作用があり、また幅広い薬効もあり、心臓がオ-バ-ヒ-トした時や、血液障害などの人体の熱症を冷ます寒性を持っている」と、欧米民族間では開発されていないユニ-クな陰陽寒熱による薬理学を提唱しています。
近代医学でも強心薬として使用される薬物は、苦味配糖体や苦味のアルカロイドが主力でいずれも利尿作用を併せ持っています。
陰陽論の原理から、苦味のものは、ひきしめたり、固める作用があり、苦汁が大豆湯を固めて豆腐になるように、血液が凝固して止血作用が現れるのです。
(3)甘味の食べ物の食能
甘 あまい味で緩める作用と滋養強壮作用があり、脾胃によい
┌温 うどん・鰻・鮪・鯛・牛肉
甘┼平 ごま・大豆・米・甘薯・蜂蜜
└寒 砂糖・なす・きうり・柿
甘味の食物は調味料の砂糖・蜂蜜・水飴・甘草・大棗などだけでなく、食物療法(食養)上では穀物・豆類・魚や肉類など、主食となる食物が属しています。
ですから不自然な精製糖や酸糖化の飴などはこの原理に反していて食害がありますから除外しなければなりません。
甘味の食物は上下左右と寒熱の歪みのない平の食物ですから常食されます。
しかも甘味の食物にはこれらの歪みを平にする重要な働きがありますから、酸苦・辛酸の味を和らげマイルドにして食べやすくしてくれます。
ことに酸味の強い食物には少量の蜂蜜や砂糖を加えると酸味が和らいでおいしく頂けます。
甘味には緩和する、ゆるめる、うすめる薬能があります。緊張をゆるめる、激痛をゆるめる、中毒を解毒する、熱をゆるめるなどの働きです。
何年か前に毒殺事件で有名になったトリカブトは漢方では冷えによる痛みや下痢、四肢の痛みなどには欠かせない薬物です。その毒性をゆるめたり解毒したりするために、甘平の黒大豆と甘草の煎液を使い、服薬時は必ず蜂蜜や甘草をあわせて使います。
(4)辛味の食べ物の食能
辛 からい味で発散作用と体を温める作用があり、肺・大腸によい。
┌温…酒・紫蘇・にら・芥子・生姜
辛┼平…さといも・ねぎ
└寒…ずいき・
日本食と中国・欧米の料理を比較すると、日本食は魚介を加えた菜食・米食(粒食)が主食ですが、中国料理や洋食は牛・羊・豚などの大動物の肉食と小麦(粉食)が主食になっている違いの他に、島国と大陸との環境・気候の相違から、鹹(塩からい)味と辛味(香辛料・薬味)の摂取量にも相違があります。
明治時代までの日本食では、塩分は多め、辛味は少なめで、欧米食や中国食では反対に、塩分は少なめ、辛味は多めです。
今日欧米風にビ-ルや清涼飲料水を多飲し、米食・菜食して多湿の日本で生活する限りでは、塩分は多い目にとり、欧米風・中国風に肉類を多食するのなら、辛味も多い目にとるのが食養生の原則です。
(5)鹹味の食べ物の食能
鹹 塩からい味で軟らげる作用があり、腎・膀胱・耳・骨によい。
┌温…めざし・干物・栗・みそ
鹹┼平…しじみ・ひじき・わかめ
└寒…食塩・のり・かに・こんぶ
鹹味の食べ物は食塩・味噌・醤油をはじめ一般に塩辛い、塩化ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどミネラルの多い食べ物です。
それらは人体の腎臓・膀胱の働きを補い、骨髄を健強に保ち、肝胆の働きを活発にし、肺・大腸や皮毛や呼吸器の働きを助け、脾臓と肌肉に有益に作用します。
ただし塩分は、心臓循環系に負担をかける欠点があるので、食物の調理には、心臓のオ-バ-ヒ-トを抑える苦みを添えることが大切です。
天然の食塩と緑野菜には苦汁(マグネシウム塩)が含まれています。
静物である植物は、陰性のカリウムが主体となり、動物や人間は、陽性のナトリウムが主体となっています。
血液や肉類に0.7%の塩化ナトリウムが含まれているように、塩分は人体に必須の食べ物です。
「塩気が足りぬと力がでない」と云われますが、塩分が欠乏すると、尿が出にくくなり、水分代謝の逆流が起こって、神経の活動が遅れ、筋肉の収縮力が弱くなることを、近代医学的にケンブリッジ大学のホジキン教授らが実験で実証しています。
塩分が不足した人は行動がスロ-モ-になり、筋肉の活動が低下し、頭脳の働きが鈍くなり、しまりのない人となり、遂には赤ちゃんか、恍惚の人のように、よだれを垂らすことになります。
涎は人の排泄する体液の中で、塩分がもっとも少ないものだからです。
最近の食塩恐怖症による減塩は、水分代謝の逆流を招いて、皮膚炎・アレルギ-症・鼻炎・花粉症・浮腫・神経症などを悪化させています。何故なら、塩分がなくては、汗も小便も出せないので、皮膚や頭部や鼻から気体として水分代謝を強いられているのが、これらの疾患の一番大きな原因だからです。
(6)二味、三味の配合
五味間の関係は五味調和の図上で右回りに当人・子・孫・祖父母・両親の関係に対比することができます。
また五味には夫々の配置からその間に補・生・剋・益・助の関係が存在します。
例えば脾胃を悪くすると次に腎膀胱が悪くなり、さらに肺大腸を損ないます。
これを家族関係に置き換えると、当人(脾胃)が病気になれば孫(腎膀胱)の世話ができなくなり、ついには身近な子(肺大腸)の世話もかなわなくなると云うことにります。この原理を把握していれば未然に害の及ぶのを防ぐことができます。
脾胃が悪いときは先ず第一に甘味で補います。
次に腎膀胱に害が及ぶのを鹹味で防いでおく。
これが二味配合の原則です。
第三に被害を受ける肺大腸までを辛味で防いでおく甘鹹辛の配合が三味配合の原理です。
調理においては甘味の素材を引き立てるために、相剋を活用して塩(鹹味)を隠し味とします。
甘味店でぜんざいを注文すると塩昆布が添えて出てくるのは、甘味によって腎にかかる負担を防ぐためで、これは二味配合の原則に則っています。
さらにこの塩昆布に山椒が加わっていれば肺大腸の守りまで気を配った三味配合の原則に適った組合わせになっています。
酒の呑み過ぎが肝を傷めることは周知のことです。
酒(辛)の害を防ぐ呑み方は、先ず肴に相剋の酸味のものをとって肝を守り、更に辛から見て子の位置の腎膀胱に害が及ぶのを防ぐために鹹味のものを食すことです。これが二味・三味配合の原則に適っており、そうすることが味覚的にも美味になるのです。
現に日本酒好きの人は、酢の物や塩辛を好みます。
またメキシコの強い酒テキ-ラは、レモンに塩をつけ噛りながら呑むのが常道です。
これらは正に三味配合の実行そのものと云えます。
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